競艇にはフライングや不良航法といった厳正に定められたルールがある一方で、ルールブックには載っていない暗黙のルールが存在する。
そこで、本記事では競艇の暗黙のルール「選手道」について徹底調査した。
前付けや新人選手の振る舞いなど、普段のレースではなかなか見えない競艇界の文化にも迫っていく。
さらに、前検で欠場につながる身体検査不合格についても詳しくまとめているので、競艇の知られざるルールや慣習を知りたい人は、ぜひ最後までチェックしてほしい。

芥川 博明(競艇歴25年)
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目次
競艇の暗黙のルールとは?
競艇を長く見ていると、ルール上は問題なさそうなのに、選手同士があえて避けているように見える動きも少なくない。
実は競艇には、公式の競走規則とは別に、選手間で共有されてきた「暗黙のルール(選手道)」が存在するといわれている。
暗黙のルールは選手の経験やレース展開、時代によって変わるものもあるので、今でも語り継がれている代表的な暗黙のルールを紹介していく。
6コースは前付け後に回り直してはいけない
競艇では、外枠の選手が内側へ動いてコースを奪いにいく「前付け」が度々見られる。
公式にも、前付けは「外枠の艇が大きく回り込んで他の艇の前につけ、インコースを取ろうとする戦法」と説明されている。
ただ、前付けをされた艇の選手は抵抗することがあるので、普段の待機行動よりも早く位置取りをすることで進入コースが深くなることがある。
そのときに、前付けした選手が元の大外へ戻るような動きをした場合、抵抗した内側の選手だけが助走距離を削られる形になるため、抵抗した艇は不利になってしまう。
特に6コースの選手が前付けを仕掛け、相手の抵抗を引き出したあとに元の位置へ戻る行為は、レースを大きく動かすこととなるので、スポーツマンシップとして避けられている。
公式には「やってはいけない」ルールとして取り上げられていないが、長きに渡って選手同士の公平性を保つための暗黙のルールとして受け継がれてきたようだ。
前付け抵抗艇の内側へ割り込んではいけない
前付けが起きた場合、当然ながら内側の選手も簡単には譲らない。
そこで激しいコース争いになるわけだが、前付けに抵抗している艇のさらに内側へ割り込むような進入は、選手間の暗黙のルールとして避けられている。
進入争いは、複数の艇が互いの出方を見ながら位置を変えるため、一艇の動きが相手の助走距離やスタートタイミングにも影響を及ぼす。
だからこそ、単に「空いているコースへ入る」という考え方ではなく、相手の動きまで考慮した進入が求められる。
ルールブックには細かく記されていない部分でも、選手同士が互いの走りを尊重する意識が、進入争いの裏で働いているといえるだろう。
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レース後は「すみませんでした」と謝罪をする
競艇には、レース中だけでなく、レース後にも選手同士の独特な作法がある。
その代表として語られるのが、レース後に「すみませんでした」と謝罪することだ。
例えば、進入争いやターンで相手の走りを妨げてしまった場合、レース後に相手へ謝罪する。
それは当たり前のことだが、華麗なターンで1着を取ってもピットでは「すみませんでした」と謝罪するとのこと。
これは、激しいレースを戦った相手や先輩・後輩レーサー、関係者に対する敬意を示すための暗黙の礼儀として伝統的な流儀とされているそうだ。
そのため、ピット映像で謝罪している人が多いのは、古くからの伝統であると言える。
新人が気をつけるべき暗黙のルールとは?
競艇選手の世界では、レース中だけでなく、レース場での振る舞いにも独特の文化がある。
特に新人は、技術だけを身につければいいわけではなく、先輩選手との関係や支部・師弟関係の中で礼儀や尊敬の意を覚えていくものがほとんど。
そこで、競艇界において、新人が気をつけなければいけない暗黙のルールを5つまとめた。
ピットでの雑務
勝利者インタビューでの振る舞い
無許可のツケマイ
高度なテクニックの使用
枠なり進入
これらは、競艇界の慣習や選手同士の関係性を理解するうえで知っておくべきポイントだ。
選手を目指す人はもちろん、新人選手が出走するレースを予想する人にとっても、こうした背景を知ることでレース中の進入や攻め方をより深く読めるようになるだろう。
雑務は新人選手が担当
競艇界では、新人選手が先輩選手の身の回りの雑務を担当するという慣習がある。
ボートの洗浄や片付け・ゴミ拾いなど、レースに直接関係しない仕事も新人の役割となっている。
競艇選手の世界では、こうした仕事も下積みの一つとして捉えられてきた。
もちろん、時代によっても変化しているため「新人が必ず雑務を担当する」と決められているわけではない。
実際に、重賞レースなどではベテラン選手も一緒に掃除やゴミ拾い・ゴミ捨てを行っている姿が見受けられる。
レースで結果を出すことばかりに目が向きがちだが、プロとして長く活動するための日々の振る舞いも大切だといえる。
勝利者インタビューで喜びすぎない
レースに勝利した選手が、勝利者インタビューで派手に喜んでいる姿を見たことがあるだろう。
一方で、以前から「新人は勝っても浮かれすぎない」という考え方が語られているようだ。
その理由は、一緒に走った選手への配慮や投票者に対する敬意などを考慮したうえで、十分な立ち振る舞いをしなければならない。
だからこそ、勝利の喜びを前面に出すだけではなく、周囲への配慮や敬意を忘れない立ち振る舞いが求められるのだろう。
近年では、勝利者インタビューがSNSなどで切り抜かれ、レースを見ていない人の目に触れる機会も増えている。
そう考えると、勝利した瞬間こそ感情に任せすぎず、競艇選手としての品格を見せることも大切なのかもしれない。
師匠の許可なしにツケマイしてはいけない
新人選手の暗黙のルールの中に「師匠の許可なしにツケマイを使わない」という話もある。
ツケマイは高度な操縦技術を必要とするため、新人が安易に使うべきではないという意味合いが強い。
実際のレースでは、ツケマイが決まれば非常に迫力があるが、内側の艇との距離を詰めながら全速旋回するため、失敗したときのリスクも大きい。
失敗した場合は不良航法で相手選手に迷惑がかかる可能性があるだけでなく、事故や怪我に繋がりかねないので、安全を最優先することが重要。
そのため、師匠が認めたうえで高度なテクニックを使用することができる暗黙のルールがあるようだ。
身体検査不合格にまつわる暗黙のルール
ここまで紹介してきた「暗黙のルール」とは少し性質が異なるが、競艇では前検時の身体検査によって欠場となるケースがある。
ただ、表面上は「身体検査不合格による欠場」とされるだけで、具体的な内容は明かされない。
そこで、身体検査不合格に該当する内容はなにか、調査した結果以下の3点が分かった。
血圧の異常
飲酒やアルコールの残留
発熱や感染症
どれも単なる体調管理ではなく、高速で水上を走るボートレーサーの安全に直結する重要なポイントである。
では、なぜこれらが厳しくチェックされるのか、それぞれ詳しく見ていこう。
血圧の異常
ボートレーサーは、高速で水上を走るボートを操縦するため、わずかな体調の変化がレース中の判断や操縦に影響する可能性がある。
そのため、前検時には健康状態が念入りにチェックされ、血圧についても以下の基準をクリアしなければならない。
| 収縮期(最高血圧) | 拡張期(最低血圧) |
|---|---|
| 150mmHg以下 | 90mmHg以上 |
一般的な医療基準における「高血圧(140/90mmHg以上)」よりもやや高めの数値まで許容されているが、生死に関わる競技なので、前検で厳しくチェックされるようだ。
身体検査で異常が確認された場合、選手本人だけでなく、同じレースを走るほかの選手にも影響が及ぶため、レースに出場できる状態かどうかを事前に確認することが重要である。
飲酒やアルコールの残留
飲酒についても、選手が安全に競走できる状態かどうかが重要になる。
アルコールが体内に残っていれば、小型船舶操縦者法において操船禁止に該当する可能性があるだけでなく、事故や怪我を誘発することになり得ない。
そうならないためにも、前検では十分にアルコールチェックが行われている。
発熱や感染症
発熱や感染症など、体調に異常がある場合も無理をしないことが重要だ。
ボートレーサー養成所でも、現在は試験当日に37.5度以上の発熱がある場合は会場への入館ができない旨が明記されている。
現役選手の出場規定そのものを示す資料ではないが、競艇に関わる現場で健康状態が重視されていることが分かる。
レースは何節も続いていくので、目の前の一走を無理に走るよりも、体調を整えて次のレースに備えることもプロとして重要な判断だ。
競艇も暗黙のルールまとめ
今回は競艇の暗黙のルールについて紹介した。
6コースは前付け後に回り直してはいけない
前付け抵抗艇の内側へ割り込んではいけない
レース後は「すみませんでした」と謝罪をする
雑務は新人選手が担当する
勝利者インタビューで喜びすぎない
師匠の許可なしにツケマイしてはいけない
健康状態が十分でなければ前検で欠場判定
競艇には、ルールブックには載っていない「暗黙のルール(選手道)」が存在した。
特に新人選手については、前付けや高度なテクニックを控え、まずは安全にレース経験を積むことが大事とされている。
他にも、ピットでの雑務や独特な挨拶など、これまでの歴史を表すかのような上下関係があるようだ。
そんなレースの裏側にある選手心理までを踏まえて、頑張っているボートレーサー達を応援していこう。










